今回紹介するのはこちら、
太宰治さんの『人間失格』です。
昭和の文豪。そして、日本の小説家としてどの世代の方でも一度は耳にしたことのある人物です。
その代表作は聞いたことのあるであろうもので言うなら、
『走れメロス』『斜陽』そしてこの『人間失格』
今回は、確かに太宰治という名前も作品も聞いたことはある。
だけれども読んだことがない。
という方に向けて、何故太宰治は70年近く経った今でも読み継がれているのか。
(1948年(昭和23年)にお亡くなりになられているので)
その中でも特に有名な『人間失格』という本作が、どうして学校や教科書で教えられ、世代を超えておすすめされているのかを解説していこうと思います。
まずはこの『人間失格』のあらすじをさくっと紹介します。
主人公である大庭葉蔵は、幼少の頃から人の本音やたてまえ、嘘や人を欺く行為などを敏感に察知する能力を持っている美少年でした。
それゆえに家族にすら自分の本音を漏らすことができずに、いわゆる道化を演じることでしか自分の居場所を確立できませんでした。
その生まれ持った能力は成長していくと更に増していき、
それに伴い葉蔵は道化という仮面を被らなければ人と関わることができなくなっていきます。
やがてその現状から脱するために、酒・たばこ・女・組織・薬と手を伸ばしていきます。
葉蔵が迎える最後とは。
そして”人間失格”とはどういうことなのか・・・
という物語です。
しかし、物語とは言っていますが実はこの『人間失格』という小説は、フィクションという想像の話ではなくて、ノンフィクションに近い太宰治さん自身の自叙伝ではないか。
という話があります。
調べてもらえばすぐに解りますが、この『人間失格』にでてくる葉蔵の生涯と、太宰治さん自身の生涯はほとんど同じなんです。
何が言いたいのかというと、この『人間失格』で描かれている一人の男の人生は、
”限りなく現実に近いものである”ということです。
さあ、では一体この作品のどこがそれほどおすすめなのか。
この『人間失格』の主人公である葉蔵は、幼少の頃から人の本音とたてまえを見抜くことができました。
「世紀末リーダー伝 たけし」という漫画を知っている方ならば、
”キムモー”だよ!
で一発で理解してくれると思いますが(笑)
つまり人間の裏と表の顔。醜くて愛のある部分。良い意味での人間らしさ。
これらが区別されずに、完全にひとつのモノとして見えてしまうということです。
想像してみると確実に混乱してしまうと思います。
恐らく幼少の頃からこう思っていたんでしょう、
「なんでみんな本当の事を言わないんだろう?」
「なんでみんなつまらなそうに笑っているんだろう?」
「なんでみんな騙し合いをして生きているんだろ?」
この時点ですでにこの少年の苦悩が垣間見えますが、
更にこの少年は美少年という要素も持っているんです。
(キムモーはストレスで、小学校一年生ですでに頭はハゲあがっているという設定でした)
それによって少年はどうなったのか?
そう!”性的虐待”を幼少の頃から受けることになったんです。
そんな経験も相まって、葉蔵は人に恐怖と疑念を抱くようになっていき、
その結果自らの本音を隠し、道化を装うようになります。
つまり、”自分が笑い者になる”というこの瞬間だけは、
他人は表の顔でも「何やってんだよ馬鹿だな」と言うし、
裏の顔でも「こいつ何やってんだ?馬鹿じゃん!」と思う。
たてまえで「面白い」と言う人も、心の底では意味は違えど馬鹿にして笑っている。
というような状態になり混乱しなくてすむので、進んで笑い者になりにいくようになります。
しかし、そんな想いを見透かされる恐怖。
そして本来の気持ちと、実際に行っている行動の差が大きくなっていくなどのストレスの結果、
葉蔵がとった行動は”現実逃避”です。
恥の多い生涯を送ってきました
という書き出しから、葉蔵の幼少から現実逃避に至るまでが描かれていきますが、
これにわかるように、葉蔵にとって道化を装って生きてきた今までは、恥だったというこです。
そしてここからは葉蔵の”現実逃避”の人生へと物語は進みます。
人を信じること、できない!!
心を許せる人、いない!!
人目を気にせず生きること、できるかいっ!!
そんな孤独街道まっしぐらな葉蔵は、
酒を覚え、たばこをふかし、女を知り、過激な思想グループの一員となりながら、
何とかして人を愛そうとしていきます。
そこから、人を愛したり自殺未遂したり、人に愛されたり自殺未遂したり、子連れの女性と同棲したり自殺未遂したりと、希望を持っては打ち砕かれていきます。
そしてやっと辿り着いた最高の”現実逃避”が薬でした。
そして葉蔵はその時の奥さん。悪友としてずっとつるんでいた友達。お金欲しさではあるが自分の保護責任者となってくれていた男に、精神科の隔離病棟へと連れて行かれます。
もともと今までの無理がたたって身体を壊しかけていた葉蔵は、「病院へ行こう」と言われた際、
普通の内科病院のことだと思っていました。
しかし連れて行かれたのは精神を病んだ人を収容する隔離病棟。
こんな人生ではあったが、こんなおれでも側にいてくれて、気にかけてくれていた唯一の存在だった3人。
そんな3人が最終的に下した判断は、”こいつは頭がおかしい狂人だ”
葉蔵はこう思いました。
おれは幼少の頃から人とは違う世界が見えていた。
人に馴染めず、社会に染まれず、
自分を信じることも、人を信じることもできなかった。
現実から目を背け、最後まで自分自身を理解できなかったおれは・・・
人間失格
これがそのままタイトルになったんですね。
以上大まかな概要をさらってきましたが、
肝心の一体どこがおすすめなのか。
というのにはまだ触れていません。
BJが何故今回これをおすすめしたいのか!
みなさんは覚えていますか?
BJがこのブログを始めるにあたって書いた[読書のメリット]という記事を。
読んだことのない方は是非読んでいただいて(ちゃっかり宣伝(笑))
そこでこう言いました。
読書の最大のメリットは疑似的ではあるが、ある一人の人物の人生を体験できることだと。
そしてその体験を”ひとつの人生のモデル”として知っておくことで、
自らの人生に役立たせることができると。
ここまで説明すればおわかりでしょうか?
つまりこの太宰治さんの『人間失格』という本は、上記で書いていますが、
限りなく現実に近い人生モデルのひとつ
なんです。
だからこそのリアル感や、誰もが読みながらハッとしてしまう瞬間。
そして誰しもが”自分は絶対にこうはなりたくない!”と思ってしまう、
反面教師的な見方のできる最高峰の小説だと感じたからみなさんにおすすめしたんです。
そしてそしてこの『人間失格』で描かれている人生モデルの内容は、
時代を超越し、国境を越えて、全ての人間に共通した人生モデルだと思います。
捉え方は人次第ですが、根底にある解釈や感想にはそれほど大差はないんじゃないでしょうか。
何故教育者は70年も前の作品を、未来溢れる子供たちに紹介するのか。
読ませようとするのか。
そして時代関係なく、太宰治さんの作品が老若男女問わず読み継がれているのか、そして未来を担う若者に読ませようとするのか。
そこには”決してこうはなるな!そして、こうはならないでくれ!!”
という太宰治さんのメッセージが、そして時を超えた全ての先輩からのメッセージが見える気がします。
先輩はね、羨ましいのさあなたの可能性が。
そして、心配なのさ無知なあなたが。
ということでいかがでしたでしょうか?
太宰治さんの『人間失格』でした。
ここ最近の記事では誰もが知っている有名な本ばかり紹介していますが、
やはり読み継がれている本にはそれだけの理由があるんだなと毎回思っています。
そしてエンターテイメントとしての要素もあるし、
なにより、「おれ!こんな有名な本読んでるよ、おい!」
っていう充足感が一番だよね(笑)
そんな気持ちで読んでんのかいっ!
という声を右から左へ受け流しつつ、
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
この本があなたの人生を変える一冊になりますように。
以上BJRYOでした
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